経営者が知っておくべき従業員株主制度 vs ストックオプションの比較
- Mamiko Yamamoto
- 7月22日
- 読了時間: 3分
株式会社において株主が有する権利は配当を受け取る権利と経営に参加する権利
株式の持つ魅力を従業員と上手に共有するための制度として従業員株主制度とストックオプション制度があります。
従業員株主制度は株を保有することが前提の制度、ストックオプション制度は株を売ることが前提の制度です。
両者の制度を特にベンチャー企業の観点から以下のように整理してみました。
■ 従業員株主制度 vs ストックオプション制度 比較表
項目 | 従業員株主制度 | ストックオプション制度 |
制度概要 | 従業員が自ら資金を出して自社株式を取得する制度 | 予め定めた価格で将来自社株を購入できる権利を従業員に付与する制度 |
株式取得のタイミング | 即時取得(拠出時点で株主) | 将来の一定期間内で行使可能 |
従業員のリスク | 株価下落リスクあり(自己資金で購入) | 行使しなければ損失なし(通常は無償または安価に付与) |
インセンティブのタイミング | 購入後すぐに株主意識が芽生える | 株価が上昇した場合に行使し、利益を得る |
導入コスト | 株主管理コスト(配当、議決権など) | 税務・会計上の処理、評価、開示等が必要 |
税務面(従業員側) | 配当所得や譲渡所得として課税 | 行使時または売却時に課税(タイミングにより異なる) |
株主構成への影響 | 株主として議決権を持つことが多い | 原則として行使までは株主でない |
会社にとっての資金調達性 | 従業員からの拠出で資金調達が可能 | 原則として調達性なし(将来の希薄化) |
ベンチャー企業にとってのメリット | ・資金調達と従業員のロイヤルティ向上が同時に可能 ・早期から経営への参画意識を持たせやすい | ・現金報酬を抑制しながら優秀な人材を惹きつけられる ・株価上昇による成果連動報酬が可能 |
ベンチャー企業にとってのデメリット | ・資金負担を従業員に強いるため導入ハードルが高い ・退職後の株式処理が煩雑 | ・株価評価や登記などの手続きが複雑 ・将来的な株式希薄化の懸念 |
■ ベンチャー企業での使い分けのポイント
創業初期〜資金調達直前段階: ▶ ストックオプションが有利 → キャッシュアウトなしで優秀人材を引き入れやすい。将来の企業価値成長へのインセンティブ設計が可能。
安定成長フェーズやIPO準備段階: ▶ 従業員株主制度も検討価値あり → 従業員に本格的な経営参画意識を促しつつ、資金調達の一手段にもなる。
■ まとめ(戦略的観点)
観点 | ストックオプション | 従業員株主制度 |
優秀人材の獲得・維持 | ◎ | ◯ |
従業員のオーナーシップ意識醸成 | ◯ | ◎ |
企業価値向上へのインセンティブ | ◎ | △ |
導入の容易さ(初期段階) | ◎ | △ |
資金調達としての機能 | × | ◯ |



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